いまは立派に成人した甥っ子が、まだ3歳ぐらいだった頃のことだ。
彼はアンパンマンが大好物だった。
裏が白地の広告をみつけては、その辺にあるペンを持って駆け寄ってきてはこういった。
「アンパンマン描いて!お母さんはかけないから〜。」
床に紙を広げて、うつ伏せになってほおづえをつきながら、
足をクロスに組んだくらいにして鼻歌まじりに待っている。
「はい。できあがり。」
そう言って渡すと、
「じゃあさ〜今度はおっきいアンパンマン。」
きょうも、始まった。
アンパンマンバリエ。
次はさ〜
わたしにとっては、恐怖のイニシエーション。
おおきいの!
ちいさいの!
笑っているの!
怒っているの!
飛んでるの!
アンパンチのやつ!
永遠に続く…。
それで気がすむと、今度はメンバーである。
バイキンマンはなんとなく描けたものの
しょくぱんまん、ドキンちゃんはうろ覚え…。
「なんかちがう〜。」
なんて言われつつ、お茶を濁す大人のわたし。
そのあとだった。
「でも、じょうずだね〜。ぼく、まだこどもだからさ、うまく描けないんだよね。」
え? 耳を疑うこの言葉。
子供が、自分のことを子供だっていうの、初めて聞いた瞬間でした。
できることもあるし、できないこともある。だって、子供だもん。
それでいいんだよ。
物騒な話も多い昨今、子供が子供でいられる世の中であってほしいなと思うのでした。
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